富士フイルム FinePix F100fd レビュー

ワイドダイナミックレンジを実現、360度顔検出機能搭載コンパクトデジタルカメラ“富士フイルム FinePix F100fd”

富士フイルム [ http://fujifilm.jp/ ]
FinePix F100fd
価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
発売日:2008年3月15日
「FinePix」といえば、シリーズを通じてイメージキャラクターをつとめる、エビちゃんこと蛯原友里さんの印象が強いが、顔検出機能「顔キレイナビ」を連想するユーザーも多いだろう。
FinePixシリーズはかねてから顔検出機能には積極的で、「顔キレイナビ体験サイト」や「顔キレイナビタワー」など専門サイトを起ち上げるほどで、いち早く横顔や斜め顔の検出にも対応するなど、他社にはない精度を備え差別化を図ってきた。
今回は、より人物を綺麗に撮影できるよう機能強化された、コンパクトなFinePixシリーズとしては最上位モデルとなるF100fdを取り上げる。F100fdは、FinePix誕生10周年記念モデルでもあり、フラッグシップモデルとしてどう進化したのかレビューしていきたい。

緩やかな曲線を活かした、オーソドックスなデザイン

まず、外観からチェックしよう。
FinePix Fシリーズは過去数世代を通じて、登場のたびにボディデザインが変更され、今回のF100fdもフルモデルチェンジされた。
カラーラインナップはお借りできたブラックのほか、ダークシルバーがある。
ボディ全体はやや大柄で丸みのあり、正面から見ると中央部分から側面に向かって、少し湾曲したような独特のフォルムをしている。
ボディサイズは幅 97.7mm、高さ 58.9mm、奥行き 23.4mm と、特にスリムでコンパクトなモデルではないが、側面が若干膨らんでいるようにデザインされているため、実サイズ以上に大きな印象を受ける。
本体重量はバッテリー、メモリーカード込みで190g、コンパクトデジタルカメラとしてはやや重い部類に入る。手に持ってみるとズッシリとした重みがあり、特にレンズ部分に重心が取られる印象で、右手だけで持っていると不安定になりやすい。
重量の割には前面はフラットで、グリップのようなものがなく、両手でのホールドが必須だ。
CMや広告ではF100fdを、エビちゃんが片手で持っているのをよく見かけるが、両手でなければ長時間のホールドは厳しい。
ボディデザインの印象としては、後ほど取り上げる高性能ぶりが感じられるほどのハイエンドな雰囲気はなく、オーソドックスにまとまっている。コストとの兼ね合いもあるのだろうが、FinePix誕生10周年記念モデルとしての、特別な個性や主張がもう少し欲しかったように思う。縦型がよいかどうかは別として、ポルシェデザインを採用していた過去のモデルのような、デザイン面でのコダワリも今後は期待したい。
上部にはシャッターボタン、ズームレバー、電源ボタンがある。電源ボタン隣には高速通信が可能な赤外線通信ポートがあり、富士フイルム製プリンター Pivi シリーズ、携帯電話などと赤外線通信による画像の送受信が可能だ。
電源ボタンを押して、約2秒弱程度で液晶モニターが表示され撮影可能状態となる。背面の再生モードボタンを長押しすると、再生モードで起動させることも可能だ。

レンズはフジノン光学5倍ズームレンズを搭載し、35mmフィルム換算で広角28mm〜140mmに相当する。広角は各社コンパクトデジカメの上位モデルに採用されるケースが多く、F100fdもそれに並んだ。
CCDは進化した第8世代となる有効画素1200万画素、1/1.6型 スーパーCCDハニカムVIII HR を搭載する。
また手ぶれ補正機能として、CCDシフト式を採用している。
次に背面を見ていこう。
背面には2.7型液晶モニター、各種操作キー、ロータリーダイヤルなどが配置されている。
ロータリーダイヤルの右上には少し起伏があり、右手で持った際に親指にフィットしやすい。
ロータリーダイヤルは上下左右方向へのキー入力と、回転によるメニュー画面でのスクロール機能を兼ね備えている。ロータリーダイヤルによるメニュー画面のスクロールは軽快で、回転速度とスクロール表示の速度は一致しており、速く回転させて急停止させても、目的のメニューを行き過ぎるというようなことはない。
液晶モニターは画素数約23万画素の2.7型を搭載する。左右の視野角は広く確保されているが、上下は若干狭く、特に下方向からだと明暗が反転して見えづらくなる。視認性を上げるためモニターの明るさをアップするには、[F]ボタンを押して [モニターパワーアップ] メニューを呼び出さなければならない。
[DISP/BACK] キーの長押しで、液晶の明るさが変わるかと思ったが、これはストロボ・操作音がオフになるマナーモード機能だった。できれば周囲の状況に応じて、手軽に液晶モニターの明るさを変化させることができる専用のボタンが欲しい。
メモリーカード、バッテリーは底面から挿入する。
FinePix F100fd のメモリーカードスロットは、2GBまでの xDピクチャーカードと SD / SDHC メモリーカードが利用できるデュアルスロットになっている。
取扱説明書では8GBまでのSDHCカードの対応状況の記載があり、正式なアナウンスはないが、手元にあった16GBのSDHCカードでも利用することができた。ただし、利用する場合は自己責任で対応して欲しい。
本体には約57MBのメモリーが内蔵されており、最大サイズの 12M−F [4000×3000ピクセル] で 11枚、L 判サイズ相当の 2M [1600×1200ピクセル] なら88枚撮影できる。

白飛びを抑え豊かな階調表現が可能な、従来比400%のワイドダイナミックレンジ

FinePix F100fd の新機能「ワイドダイナミックレンジ」の前に、「ダイナミックレンジ」について軽く触れておこう。 「ダイナミックレンジ」をごく簡単に説明するなら、「最も明るい部分から、最も暗い部分の濃淡の領域(階調)」と言うことができる。
例えば、白(最も明るい部分)から黒(最も暗い部分)の間を、グレーのグラデーションで表現したとする。このときグラデーションの微妙な濃淡の変化を表現しようとすると、白と黒の距離をできるだけ離す必要がある。この濃淡の領域がダイナミックレンジであり、FinePix F100fd の新機能「ワイドダイナミックレンジ」は、特に明るい部分の領域が広げられ、明るい部分の微妙な濃淡の変化を表現できるようになった。
FinePix F100fd でのダイナミックレンジの設定は、マニュアルモードのみで利用可能で、ISO感度と連動する。
例えばISO感度を200に設定している場合、設定できるダイナミックレンジは100%または200%まで、400%を利用したいときには、ISO感度を400以上もしくはAUTOにする。
また逆にダイナミックレンジを400%に設定していると、ISO100、200は利用できない。
ワイドダイナミックレンジは明るい部分と暗い部分が混在する、コントラストが激しい被写体を撮影する場合に有利だが、濃淡の表現が豊かになったことでコントラストが抑えられ、被写体によってはメリハリがなくなった印象を受ける場合もある。
しかし撮影段階では、色や明るさの情報をできる限り記録しておくことは重要で、メリハリが気になるようであれば、あとから画像編集ソフトを使って色調や明暗を編集すればよいだろう。

ISO100

ISO100・ダイナミックレンジ100%

ISO200・ダイナミックレンジ200%

ISO400・ダイナミックレンジ400%
では常にダイナミックレンジを上げればよいかというと、ISO感度も連動してアップし、本来暗くあるべき部分も明るくなるため、必ずしもそうとはいえない。そのためダイナミックレンジとISOを被写体に対して、双方をどのような組み合わせにするのが最適なのか判断しづらい部分もあるが、その場合はダイナミックレンジを自動で設定する [AUTO] に設定しておくと良いだろう。

しかし、設定を変えつつ何枚か撮り比べる場合など、2箇所の設定を行き来するのは操作が煩雑になりがちだ。しかもシーンポジションのような目に付きやすいメニュー階層には無いため、利用される機会が少なくならないかと、いらぬ心配をしてしまう。
同様にワイドダイナミックレンジを搭載するネオ一眼 S100FSと、F100fdを購入するユーザー層は明らかに異なるので、例えば「白飛び軽減モード」というような機能として、わかりやすい名称で、見つけやすいところで提供するなど、利用しやすい工夫が必要だろう。

横顔、斜め顔、さらに上下逆さ顔まで、360度方向検出できる「顔キレイナビ」

コンパクトデジタルカメラではすでに必須となった顔検出機能だが、F100fdの「顔キレイナビ」がさらに進化し、横顔や斜め顔、上下逆さ向きと360度方向の検出に対応する。
顔キレイナビは、 [オート] [ナチュラルフォト] [高感度2枚撮り] [オート] [マニュアル] [人物][夜景] [夕焼け] [スノー] [ビーチ] [美術館] [パーティ] で利用可能で、最大10人までの顔を同時に検出できる。
試しに横顔・うつむき顔・逆さ顔など、あらかじめ撮影されている人物写真にF100fdを向けてみたが、かなりの精度で顔検出が可能だった。
なかでも横向きで、さらに逆さでも検出できたのは驚いた。日常ではなかなか遭遇しないシチュエーションだが、顔検出の性能の高さを実感することができた。
F100fdでは顔検出速度が約0.036秒と高速化され、顔の向きに多少の傾きがあっても、ほとんど待たされることなく検出される。
顔キレイナビは顔の位置を検出するだけでなく、顔の露出、ホワイトバランス、ストロボの光量も最適な状態に設定され撮影できる。さらに再生モードでは顔を検出して、拡大表示やスライドショーも楽しめる。
ストロボ発光時の赤目対策として、撮影後に画像イメージ内の赤目を判断して補正処理する自動補正機能も搭載している。
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