カシオ EXILIM PRO EX-F1 レビュー

世界最速(※)の超高速連写が可能な、次世代ハイスピード・カメラ“カシオ EXILIM PRO EX-F1”

 カシオ [ http://dc.casio.jp/ ]
 EXILIM PRO EX-F1
 価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
 発売日:2008年3月
 ※民生用デジタルカメラとして、2008年1月6日現在。
今回は開発段階の撮影サンプル画像がネットで公開されて以降、そして発売されてからもその高性能ぶりが話題のEX-F1を紹介する。EX-F1の特長でもある、これまで一般向けデジカメでは不可能だった超高速撮影、ハイスピードムービーの実力を中心にレビューしていこう。

デジタル一眼レフとほぼ同等、ズッシリとした重量感のあるボディ

まずは外観からチェック。
EX-F1のボディはデジタル一眼レフとほとんど違いはなく、大きなレンズとグリップが特徴的だ。EX-F1はレンズ交換ができないレンズ一体型で、このタイプのデジタルカメラはレンズ交換が可能な一眼レフと区別するため、富士フイルムがFinePixシリーズで名付けた「ネオ一眼」と呼ばれることもある。
レンズの取り外しを必要としないため、ヘッド部分は通常のストロボとLEDライトの2つを格納し、レンズに被さるよう前面にせり出しているのが特徴的だ。グリップは大きく、しっかりとホールドすることができる。全体的にボディは大きく重量感もあり、ある部分でコストを削ったような安っぽさは全くない。最近では女性ユーザーを意識した小振りなデジタル一眼も登場しているので、比較対象によってはEX-F1の方が大きく重い場合もあるだろう。
撮像素子は有効600万画素の、高速読み出しCMOSを搭載する。現在のデジタルカメラ市場で600万画素モデルを探すのは困難だが、EX-F1は画素数をどうこう言うカメラではないだろう。
レンズは光学12倍ズーム、35mm換算で36〜432mmで、ズーム倍率が変化してもレンズの長さは変わらない。またレンズ鏡筒部にはリングがあり、設定によりフォーカス、ズーム、フレームレートを割り当てることができる。
製品には写真のような、専用のフードが付属する。
グリップ部分にはシャッターボタン、ズームレバー、電源ボタン、撮影モードダイヤル、連写ダイヤル、スピーカーがある。
レンズ鏡筒部側面にはフォーカス方式を変更できるフォーカスボタン、逆光補正ボタン、AE/AFロックができるAE-L/AF-Lボタンが並ぶ。
ストロボは通常のフラッシュに加え、LEDライトも内蔵し、連写速度が1〜7枚/秒ではフラッシュ、10〜60枚/秒ではLEDライトが連動する。ストロボ部の左右にはマイクを内蔵する。
続いて背面を見ていこう。
背面には再生・撮影モードボタン、2.8型ワイド液晶モニターなどが並び、視度調整が可能な電子ファインダーを搭載する。液晶モニターは約23万画素で、上下左右・斜め方向からの視認性が高く良好だ。
上下左右方向キーのコントロールボタンと、回転するコントロールダイヤルが搭載され、各種メニュー画面の操作や、動画再生スピードの変更などに対応する。
一般的に動画撮影は撮影モードダイヤルなどの1つとして提供されることが多いが、EX-F1では背面に専用の動画撮影ボタンが用意されていて、上部の撮影モードダイヤルの状態に関係なく、いつでも動画撮影をスタートすることができる。
メモリーカードはグリップのやや後方にあるスロットへ挿入する。
本体には約31.9MBのメモリーを内蔵し、 RAW形式で2枚、最大サイズ6Mで9枚、動画では10〜30秒程度しか記録できない。
バッテリーは大型で、グリップの底面から挿入する。
グリップとは反対側の側面カバーには、DC IN端子、HDMI(ミニ)端子、USB端子、マイク端子がある。USBケーブル、AVケーブル、USBレリーズケーブルが付属し、HDMIケーブルは付属しない。HDMI接続でハイビジョンテレビなどへ出力したい場合は、片方がミニ端子のHDMIケーブルを購入する必要がある。

最高60枚/秒の撮影が可能な、超高速連写機能

では、EX-F1の特徴的な機能のひとつ、多彩な連写機能を見ていこう。
本体上部には「連写ダイヤル」があり、通常の撮影は [一枚撮影]、連写を利用したいときは [フラッシュ連写] [パスト連写] [高速連写] [スローライブ] [BKT(ブラケティング連写)] のいずれかを選ぶ。
では [高速連写] から見ていこう。
高速連写では、1秒あたり最大で60枚の撮影ができる超高速連写が可能で、水滴が落ちる瞬間や風船が割れる瞬間など、肉眼では見ることができない瞬間を撮影することができる。
高速連写では、1秒あたりに撮影できる枚数を1〜60枚で設定可能で、1秒あたり60枚を指定した場合1秒間撮影し、1秒当たり10枚に指定した場合6秒間の撮影が可能だ。
例えば1秒あたり60枚に設定すると、1秒を60枚の静止画として細かく撮影できるが、撮影できる時間は1秒間なのでタイミングがずれると、シャッターチャンスを逃す可能性がある。そのため場合によっては1秒当たり20枚に設定して、3秒撮影できる方がシャッターチャンスを逃さずに済むケースもある。このあたりの勘どころは、ある程度の慣れが必要だろう。
撮影された画像はすぐにSDカードへ記録されるのではなく、一旦はカメラ本体内のバッファメモリに貯められている。そして最大60枚の中から選択した画像だけ選んで保存する [画像選択保存] か、全てを保存する [全画像保存] かを選ぶ。[画像選択保存] を選んだ場合には連続撮影した画像がコマ送りでプレビュー表示され、目的のカットだけ選んで保存することができる。
カメラ本体での画像選択はやりにくいところもあるので、とりあえずは [全画像保存] を選んで60枚全部を記録して、あとからパソコンに取り込んで画像を選んだ方がやりやすいだろう。
その場合、最大で6Mサイズの画像を60枚記録するので、低速なSDカードを利用していると記録に待たされることになる。
6M・FINE・60枚/秒の高速連写で試したところ、スピードクラス4のSDHCカードで約40秒程度、スピードクラス6のSDHCカードで約15秒程度だった。Webサイトのサポート情報では、10MB/s以上の転送能力があるカードの利用が推奨されており、高速連写を多用するならスピードクラス6のSDHCカードが必須だ。

その他の連写機能として「フラッシュ連写」があり、連写速度が1〜7枚/秒の場合はフラッシュ、10〜60枚/秒の場合はLEDライトと使い分けることで、フラッシュを用いた高速連写が可能だ。
「パスト連写」は、シャッター半押し状態で一時的に記録し続け、シャッターチャンスで全押しするとその前後60枚が記録できる。
さらに「スローライブ連写」はシャッターを半押しすると、そこからバッファメモリに一時的に記録された2秒間がスロー再生され、シャッターチャンスと思ったところで全押ししたところが記録される機能で、スロー再生している2秒間の動画から、静止画を切り取っているような感覚だ。
他にも明るさやホワイトバランス、被写体との距離を変化させながら連写できる「ブラケット連写」がある。

驚異的なスーパースローの世界が記録できる、ハイスピードムービー機能

EX-F1は3つの動画モードを搭載する。1つ目はアスペクト比4:3、画像サイズ640×480ピクセルで標準画質の撮影が可能な [STD] モード、これは一般的なデジカメで利用できる動画モードと同等だ。2つ目はアスペクト比16:9、フルハイビジョン撮影が可能な [HD] モード。3つ目はハイスピード撮影が可能な [HS] モードで、先の超高速連写と並ぶEX-F1の目玉機能のひとつだ。
では、そのハイスピード撮影が可能な [HS] モードを見ていこう。
HS モードは、1秒間に撮影できるコマ数をアップすることで、被写体の動きや変化の様子をスーパースローで捕らえることができる動画撮影モードだ。
動画はパラパラマンガのような静止画の連続だが、そのコマ数を増やせば微妙な動きを表現できるパラパラマンガになる。コマがめくれるスピードが同じなら、数が増えたぶんスロー再生のように見える。ハイスピードムービーの原理はこれと同じで、EX-F1では1秒間に撮影できるコマ数を飛躍的にアップさせているのだ。
この1秒間のコマ数のことを「フレームレート(単位:fps)」といい、その数値が大きいほどハイスピード撮影が可能で、スーパースロー再生ができる。
EX-F1で利用できるフレームレートは、[300fps] [600fps] [1200fps] [30-300fps] の4種類ある。
例えば [300fps] に設定した場合、1秒を300コマで撮影し、再生時には1秒30コマとして再生すると、結果的には1秒間に記録したものを、10秒間の動画として再生、時間を引き延ばしたかのようなスーパースローの世界を記録することができる。
また、[30-300fps] に設定しておくと、撮影中に本体背面の [SET] ボタンを押すと、通常の動画のフレームレートである30fpsから、一気に300fpsに変化させることが可能で、映画「マトリックス」に見られるような、途中までは通常のスピードで、ここぞというシーンからスーパースローといったユニークな撮影もできる。

撮影そのものは非常に簡単で、画質設定でフレームレートの設定を行い、本体背面のムービーボタンを押すだけだが、注意しなければならない点もある。

まず、フレームレートによって画像サイズが変わる。[300fps] で512×384ピクセル、[600fps] で432×192ピクセル、[1200fps] で336×96ピクセルと、フレームレートがアップするにつれて小さくなる。それぞれは撮影時、画角に応じて液晶モニターの上下に黒い帯が入る。

またハイスピード撮影では、通常のビデオカメラのように手持ちで撮影すると、ちょっとした手ブレや腕の動きからの影響が大きい。特に画角が小さくなる [600fps] [1200fps] では、動物や昆虫といった動きの激しい被写体を捕らえるのはかなり難しい。そのためハイスピード撮影は、手持ちで被写体を追うのではなく、三脚に固定してじっくりと被写体を捕らえる目的に向いている。
また光量が不足する屋内などでは、かなり暗く撮影されるので照明など光の環境も必要だ。

撮影した動画はMOV形式で記録され、パソコン上でもQuickTimeプレーヤー(ver.7.4.5)で再生できる。またMOV形式は、動画共有サイトYouTubeにもアップロード可能なファイル形式で、すでにYouTubeにはEX-F1で撮影されたスーパースロームービーが、たくさんアップされている。

これら注意すべき点はあるが、これまでテレビ番組でしか見ることができなかったハイスピード撮影が、自分でも手軽に撮影できるのは非常に面白い。次ページにも動画サンプルを掲載したので参考に見て欲しい。EX-F1は本体にメモリーを内蔵するので、記録時間は短いが店頭でもスーパースロー撮影を体験することができるだろう。
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