キヤノン IXY 30S レビュー

シリーズ初、F2.0レンズと裏面照射型CMOSセンサー搭載
コンパクトデジタルカメラ“キヤノン IXY 30S”

 キヤノン [ http://canon.jp/ ]
 IXY 30S
 価格:オープンプライス 最新価格を調べる >>
 発売日:2010年5月27日
コンパクトデジタルカメラの世界で不動の人気を保っているのが、キヤノンのIXYシリーズだ。毎回スタイリッシュでデザイン性の高いモデルを投入し、男女共に受け入れられている。
今回紹介する新製品IXY 30Sも、デザイン性にこだわった意欲モデルだ。

独自の「カーバチャーデザイン」を更に推し進めた個性的なデザイン

まず、ボディデザインをチェック。
IXY 30Sのボディデザインは過去のシリーズ同様、「カーバチャーデザイン」を採用する。滑らかな曲線を多用した「カーバチャーデザイン」は、すでにIXYシリーズの個性ともなっており、IXY 30Sはそれをさらに推し進めた流線型のボディが特長で、直線は液晶モニターのフレームなどごく一部にしか見られない。

IXY 30Sはカラーラインナップが充実しており、全5色が用意されている。特にレッドとイエローはボディの曲面と光沢感が相まって、イタリア製のスポーツカーを彷彿とさせる。そのレッドとイエローは3層の塗装を重ねており、シルバーはブラスト処理、ブラックは艶消し処理、ホワイトでは4層の塗装を重ねるなど、それぞれ表面の質感にもこだわっている。

左からシルバー、レッド、ホワイト、イエロー、ブラック
IXY 30Sは本体カバーがステンレスを採用しているため、手に持つとひんやりして重量感がある。ボディに丸みがあり、見た目がコンパクトなので予想外に重く感じられる。ブラックモデルは表面がデジタル一眼のような艶消しになっていて、ちょうど同じサイズの黒い石を持っている感覚にも似ている。ワイシャツの胸ポケットだと、やや存在を主張する重さだ。しかし、高度な表面処理との相乗効果により、いいものを持っていると感じさせてくれる。
上部には電源ボタン、シャッターボタン、ズームレバー、モードスイッチがある。ズームレバーのリング部もボディの形状に合わせて一部が削られており、細かな部分へのこだわりが感じられる。突起や凹凸も最小限に抑えられ、ポケットやバックからの出し入れもスムーズに行える。ただ、各操作キーは小さめで、手が大きく指が太めの男性だと操作し辛いかもしれない。
レンズは広角28mmを搭載し、35mm判換算で28〜105mm相当の光学3.8倍ズームとなる。明るさはワイド側で F2.0と、IXYシリーズ初の明るいレンズを搭載する。
撮像素子は有効約1,000万画素で、裏面照射型の1/2.3型高感度CMOSセンサーを搭載する。この高感度センサーと映像エンジン「DIGIC 4」を組み合わせた低ノイズ高画質技術を「HS SYSTEM」と呼んでいる。最大記録サイズは3648×2736ピクセルで、高速連写が可能な「ハイスピード連写モード」と、キャンドルの明かりだけでも綺麗に撮れる「ローライトモード」時は、サイズが1824×1368ピクセルになる。
次に背面を見ていこう。
背面には3.0型のワイド液晶モニターと再生ボタン、MENUボタン、コントローラーホイールがあるのみで、とてもスッキリしている。
16:9のワイド液晶モニターの解像度は約23.0万ドットで、数値的には特に高解像度ではないが、クリアな表示が得られ不満はない。視野角も広く、上下左右ほぼどの方向からでも高い視認性が確保されている。ただ、晴天下では見づらい時もあった。暗い場所では自動的に画面の明るさがアップする「ナイトビュー機能」を搭載する。できれば晴天下でも見やすくなる、なんらかの対応が欲しい。
操作上のポイントとなる「コントローラーホイール」は、回転操作でメニュー項目や画像の選択などの操作が行える。また、「コントローラーホイール」の上下左右を押すと露出補正やストロボ設定を呼び出すことができるが、アイコンや機能名が全く記されていない。撮影モード中、「コントローラーホイール」に指を重ねるとそれら割り当てられた機能が画面にガイダンス表示される。この操作性は過去のモデルと似てユニークな仕掛けではあるが、これまでIXYシリーズを使ったことがないユーザーだと気が付かず操作に戸惑うだろう。
バッテリーとメモリーカードは、本体の底面から挿入する。メモリーカードはSD、SDHCに加え、容量32GBを超えるSDXCカードにも対応する。IXY 30Sは1280×720ドットのハイビジョン動画の撮影に対応するが、その場合はSDスピードクラス4以上の使用を推奨している。無線LAN経由で画像を転送できる「Eye-Fi」カードの利用にも対応し、接続・転送状況などをモニターで確認することもできる。
側面には、付属のAVケーブルまたはUSBケーブルを接続できるAV OUT・デジタル端子と、HDMIケーブルによりデジタルテレビに出力できるHDMI端子が用意されている。HDMIケーブルは付属しないので、別途用意する必要がある。

明るいF2.0レンズと、裏面照射型CMOSセンサーにより高画質・高感度化を実現

IXY 30Sの注目すべきポイントはコンパクトデジタルカメラながらもF2.0の明るいレンズと、裏面照射型のCMOSセンサーを搭載していることだ。

オートモード、1/60、F2.0、ISO800。

まず、レンズの「F2.0」という表現に関して簡単に説明すると、レンズの明るさは「F値」で表され、これはレンズに入ってくる光の量(光量)を示している。そして、取り込める光の量が多いほど数値が小さい。ズームレンズの場合は画角によってF値は異なり、IXY 30SのF2.0というのは広角端の値だ。他のIXYシリーズの多くがF2.8であることからも、IXY 30Sの方がより明るいレンズであることがわかる。
レンズが明るいことによるメリットはいろいろあるが、薄暗い環境でも速いシャッタースピードが使えたり、ISO感度を低く設定できるなど総体的に高画質な撮影が可能となる。過去にレビューしたPowerShot S90もF2.0を搭載するが、IXYシリーズでの採用は本機がはじめてとなる。(撮像素子のサイズはPowerShot S90が大きく、CCDを採用する)

また、これまでのCMOSセンサーでは構造上、受光面の前面に配線層があったため、レンズから入射する光を遮ってしまいセンサーの受光率が減少していた。その構造を逆転し、配線層を受光面の裏側に配置して、受光率をアップさせたのが裏面照射型のCMOSセンサーだ。これで従来よりも多くの光を集めることができるので、高感度撮影に有利になった。


オートモード、1/20、F2.0、ISO1600。
暗い状況の撮影で試したところ、感度を上げたISO800ではディテールがやや甘くなるが、ノイズによるざらつき感はほとんどない。ISO1600ではさらに輪郭は甘くなり立体感が失われるが、カラーノイズはほとんど発生せず、人の目で見た印象に近い自然な撮影結果が得られた。大きく出力するのには向かないが、ブログ掲載用として画像編集ソフトで縮小したうえで、少し強めにシャープネスをかけてやれば充分利用できるレベルだ。このノイズの低減は裏面照射型CMOSセンサーに加え、映像エンジン「DIGIC 4」が貢献している。
ISO感度はAUTOモードの場合で最高感度ISO1600まで、シーンモードの「ローライトモード」でISO6400まで自動設定され、プログラムモードでは手動によりISO3200まで設定できる。
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